趣味でも文化でも伝統でも教養でも、まあその種の衒学的になりがちな領域は概ね似ているのだが・・・
人間は空を飛べない。
高層ビルから飛び降りればいい、飛行機に乗ればいい、って話をしてるわけじゃないのは察してもらえるよな?
人間はお金がなければ生きていけない。
物々交換で可能なのは生存であって、健康で文化的な最低限度の生活ではない。例外の話については同上。
人間は法や規範がなければ奪い合い殺し合う。
弱肉強食の原理は決して消滅しはしない反面で、法や規範があるからこそ秩序は成立する。
塩水に砂糖を混ぜても塩辛さは消えない。
紙を火に近づければ燃えるし、炭酸水を沸騰させると炭酸が抜けてしまう。
何が言いたいかってさ。
人間が文化だの伝統だの趣味嗜好だの何だのというものを語るとき、
物理法則や化学理論、あるいは政治や経済、法律および人体の生理機能など、
努力したってホイホイ変えることはできないとか、絶対に変わらないとか、そういったものはあるわけじゃん?
でも、なぜか文化を語るときに、
当時の社会情勢や経済状況や法制度の違いなどに言及する人が極端に少ない。
バブル崩壊やリーマン・ショックで世界的に不況の嵐が吹き荒れたという原因があったとしても、
なぜか文化の問題は文化の問題だけで完結するかのように断言してしまう。
少なくとも考慮は一切なされない、というケースが非常に多い。
中国共産党のように一党独裁を布き検閲や言論弾圧・表現規制を厳しく実施している国では、
創作物の自由さが大幅に制限されるのに、
そういった政治的状況を無視して、中国の創作物の魅力と短所を語るようでは片手落ちだ。
あるいは、さまざまな植物が繁茂し降水量も多いため、ただ生存するだけなら比較的容易な熱帯地域よりも、
寒さに耐えるために必死にならざるを得なかった温帯~冷帯・寒帯地域のほうが、
先進国の数は圧倒的に多い。
地理的な状況から文化や科学技術の差が生まれ、
それが教育水準や宗教倫理や遵法精神などにも影響するのは疑う余地もなかろうが、
なぜか、文化だの趣味だのというものを語るときに、それらの影響を加味している人がほぼ全くいない。
・・・と、この話題何度目だよと思ったTwitterのオハナシがあったので。
読む価値は全くないからリンクも貼らないけどさ。
日本は人類史上初となる「有権者の過半数が50歳以上=産めない人間になった国」であり、
世界的にも非常に稀な「30年もデフレが続いている国」である以上、
「今の日本」は人類史上に前例のない、特殊にして異常な国なんだと理解する必要があるはずだろう?
なのに日本人はどーのこーの、アメリカ人はどーのこーのと語ってみたところで、
日本のカネの80%以上は50歳以上が持っているのだから、
文化的・技術的な投資がどうのこうのという話題になるなら、論点はそこじゃないだろう?
カネ持ってる連中が技術や文化の発展・成長・保全に興味を示しているかどうかが問題なのであってさ。
アメリカは金持ちほど投資してさらに儲けるという文化・伝統があり、
それは基軸通貨の特権として約束されたインフレ景気と未来の成長を疑う必要がないからこそ可能な、
偽りのフロンティア・スピリットでしかない。
アメリカは日本のように、
無学かつ無能で粗暴な共産主義者モドキがカネの80%を独占し、
かつ有権者の過半数を占有しているような「老害デフレ国家」ではない。
つまり。
「日本が」文化や技術に対して云々、ではなく。
「日本のカネも権力も影響力も独占している連中が」文化や技術に対して云々、
でなければおかしい。
そもそも出産適齢期という意味での「若者の人口」なんか日本人全体の1/6しかいないのに、
なぜたった1/6だけで全てが決まっているかのように語れてしまうのか?
結局は、趣味人として生きている人がなんとなく思っただけという話題でしかないのだろうし、
実際そんなもんに対してマジになってどーすんだという話でもあるんだが、
早合点と安請け合いの応酬で間違った認識が広まり続けるほど・・・
僕が拭かなきゃいけないケツの数が増えるから嫌なんだ。